2013年06月10日

お客さんの願いを実現するには【パス】する人が必要

前のブログで書いた「発想を【枠】に落とし込む」話でとても気になっていたことがありました。
私に知識共有のwebサービスを作りたいと相談してきたNさんは、なぜ『ナレッジベース』という言葉を他の技術者さんから聞き出せていなかったのでしょうか?

夫によると、「技術専門の人の発想は〈使用ツール〉が先になる」とのことでした。
「人間がしたいこと」から出発するのではなく、「この道具を使うなら何ができるか」と、道具のほうが出発点になるそうです。
だから、「知識共有サイトをフローチャートで作りたいのですが」と聞かれたら、「フローチャートで」実行できるかどうかに集中して考えていきがちなのだそうです。

私は以前やっていたマーケティング書籍作りの中で、「お客さんの望み」と「完成する商品」には、なぜ食い違いが出るのかを考えていました。
要因は様々あるのでしょうが、大きな理由のひとつに【繋ぐ人・担当者】が少ないことが要因ではないかと思ったのでした。

【以前】Nさんのケースでは、以前は以下の流れになっていました。
―――――――――――――
Nさん「知識を共有するサイトを作りたい」

Nさん「まずはフローチャートを作ってみました」

技術者の方「フローチャートをそれ以上展開するのは難しいです」
《ここでストップ…》
―――――――――――――

【今回】ここに、私や他の繋ぐ人が入りました。
――――――――――――――
Nさん「知識を共有するサイトを作りたい」
「まずはフローチャートを作ってみました」

私「私もそのサービスが欲しい! フローチャートでどう作るのかを家で聞いてみる」

(家会議で夫と1時間半の七転八倒の末)

夫「それは『ナレッジベース』だね。それなら使用ツールは『フローチャート』よりもこちらの『4つの大分類+階層システム』のほうが良さそうですよ」

Nさん「この『4つの大分類+階層システム』を作りたいのですが」

技術者の方「これならホームページビルダーでできますよ。1分野だけ雛形を試作してもらえれば、そこからまたアドバイスできますよ」
――――――――――――――

と、なってきたのです!
私はものすごーーーく感動しました!
私みたいなお客さんのような、技術はないけど「こんなことができたらいいな」と思っている人の願いが、
Nさんという仮組みの試作品を作ってくれる人がいて、
SEの人(今回はたまたま夫でしたが)が、その試作品を見て、実現するならどのシステムが良さそうかを上げて、
実作者である技術者さんに意味が通じて、具体的な実現方法にまでたどり着いたのです。

やり方が決まっている商品・製品ではなく、お客さんのぼんやりした「願い」を実際の「形」することが、幾つものパスを経ることで可能になるのではないかと思いました。

パスする人のお隣になる条件は、コンテクスト(暗黙知)を共有できる人同士であること。

日本の技術分野は非常にレベルが高いという話を聞きます。
でも、製造業やITなどの分野では、“技術者さんロジック”が中心になりがちという話も聞きます。
お客さんのぼんやりニーズを汲み取るひとつの方法として、
【コンテクストを共有する人が隣同士になって、パスをすること】ができれば良いのかなと思いました。

posted by 渡辺由美子 at 15:42| Comment(0) | ビジネス

【分析】と【事実】は違う

私は「アニメをお客さんにどう届けるか」をよく取材するのですが、ASCII.jpや日経ビジネスオンライン等での取材を通して、私の望みのひとつは「お客さんの心理が商品に反映される」ことにあるのだなと感じました。

それで、マーケティングの書籍を企画したのですが、
形にするのが難しくて難しくて。
なぜ形にできないのか、その理由が書籍の制作中はずっとわからないままでした。
でも最近、その答えのヒントを聞く機会が増えたように思います。
(脳にフラグが立つようになってきたのかもしれません)

先日、コワーキング(シェアオフィス)でIT系の仕事をされているTさんと話していて、Tさんが私にこう言いました。
「今、渡辺さんがお話してされているのは『分析』ですよね。さっきまでのは『事実』。
『分析』と『事実』は違いますよね」

あっ、そうか!
確かに私は、事実と分析の分離がうまくできていないときがあると気付きました。
実は私、アニメライターでありながら、「あらすじ」を書くのが苦手だったんです。
「『あらすじ』には、『事実』だけを書くこと。キャラクターの行動は書くべきだけど、キャラクター個人の心情を交ぜてはいけない」。
他の人に教えてもらって、ようやく『事実』と『思い』は分けるものなんだと気付きました。

さすがにアニメ分野ではもう大丈夫なんですが、新しい分野に挑戦するときは、事実と自分の感情と分析がごっちゃになってしまうことが多くて、それを意識して分けていくことが必要だと思いました。

タグ:分析 事実
posted by 渡辺由美子 at 15:25| Comment(0) | 考察

2013年06月01日

発想を人に伝えるためには【枠】に落とし込む その2

「発想を人に伝えるためには【枠】に落とし込む その1」からの続きです。

今日、人工知能の研究者である三宅陽一郎さんと、Twitterでやりとりしてみました。
三宅さんのつぶやき:「『いかにして無限を有限でおさえるか』 ー そう、それが人間が何かを作るということだ。いや、何かを行うということでさえある」
渡辺:「創造を、人の手に渡るもの――有限におさめるために『枠』を作ることが必要かなと。そして大勢の人が手に取れるのは『一定の法則を持った枠』。

三宅さん:「なるほど。枠、ですね。枠(フレーム)は人工知能が問題を捉える時の基本概念で、そこで文脈を設定して問題を記述します。スモールセオリーとも言いますが確かにあれも発散する状況の無限を有限におさえる仕組みです。」

「枠(フレーム)は人工知能が問題を捉える時の基本概念」。
そ、そうだったのかーー!
枠におさめる重要さを、さらに実感した気がします。

=================
ここでまた私の特性である「ぼんやり総論」を紹介します。

家会議にて。
私:「私のTwitter発言では、同じテーマを上げているときでも、リツイートの数が多いときと少ないときの差が極端に出るよ。なぜだろう?」
夫:「君の話は“ぼんやり総論”になりがち。『“どこでもドア”があったらすごい運輸ネットワークが作れる』と言う。だから『“どこでもドア”の代わりにこのシステムを使えばいいか』と脳内フラグが立つ人は共感してくれるけど、『“どこでもドア”なんてないじゃん』と深掘り各論で考える人が大半だから」。
はい…そうですね(げふっ)。
夫:「『現実』に持っていくためには、あと数手必要。現実化する方法を考える人には面白がってもらえるけど、そうでない人には個別具体的なキーワード(クールジャパンとか)を持ってこないとピンとこない」。

私の話はどうも大きなことを言っているらしいけど、骨組みがぼんやりとしていて、読者さんにとっては茫洋としすぎている。「ピンとくるとっかかり」が少ないみたいなんです。

現実味と具体性を持たせるためには、あと数手必要。
あれもこれも大事だと思うボトムアップ型の想像力は大きいけど、人に伝えるには、「わかりやすい具体的なフレーズ」で「テーマを絞って」「〈結論〉から先に言う」。そうしなければ伝わらない。
具体的も、テーマ絞りも、結論から先に言うも、すべては【枠(フレーム)】作りから始まるようです。

posted by 渡辺由美子 at 19:24| Comment(0) | 考察

発想を人に伝えるためには【枠】に落とし込む その1

昨日今日と、とても良い発見が続きました。
「概念的なことを人に伝えるにはどうすれば良いか」と言うことです。

私は今、知人が制作しているWebサービスについて一緒に考えているのですが、
そのサービスは、とある知識を共有するサイトで、共有するツールとして「フローチャート」が必要だと思っていました。
その話を、家会議(夫と私が相談することをそう呼んでいます)にかけたところ、
夫は「やりたいことはわかるけど、フローチャートにすると、一般の人は投稿できないよ」と言うのです。
「回答が無限に出そうなものをフローチャートにすると、無限に広がってしまう。だから「設問づくり」が要(かなめ)なんだけど、その設問は相当に練らないといけない類のものになる。だから、一般の人が投稿できるレベルにまで落とし込めない」ということでした。
フローチャートが無限に広がってしまう理由は、「インプットとアウトプットの枠が決まっていないから」とのこと。

その話から思い浮かんだのが、以前、『オタクの仕事術2』で書いたロジカルシンキングの話でした。
――――――――――――――――――――――
ロジカルシンキングの考え方によると、思考法には、トップダウン(演繹法/抽象概念から具体化する)とボトムアップ(帰納法/具体的事象から抽象化)があるのだそう。

■ロジカルシンキング/ロジックツリー の例
家弓正彦氏ブログ「ロジックとパッションの狭間から。。。」2009年07月27日
質問するチカラ(2) 〜事前準備していますか?
http://kayumi.jp/archives/792413.html
※このサイトでは、「■ボトムアップとブレイクダウン」の項にくわしいです。
ブレイクダウン=トップダウンですね。

私は、「トップダウンとボトムアップ、どちらが得意かは人によって違うのではないか」と考えたのでした。
私は長文のインタビューを短くまとめる原稿が苦手です。どれもこれも大事な言葉のような気がして、なかなか削れません。
夫は、「トータルでワード6枚なら、3つお題を決めて各お題を2ページに収めていけば完成する」と言います。
私はその方法ではうまくいきませんでした。代わりに編み出したのが、「似ている内容の文章を寄せ集めて、幾つかの大テーマにしていくこと」でした。
全体からテーマごとに分割できる夫は、トップダウン思考。
細かい似た事象を寄せ集めて最終的に大きなカテゴリーを作っていく私は、ボトムアップ思考だったのです。

――――――――――――――――――――――

ボトムアップ思考の私は「枠を作る」ことがとにかく苦手。だからフローチャートのような、一見枠に見えるものに惹かれて、でも夫に「それは全体を定量に入れる枠にはならない」と言われることになったのでした。

話は家会議に戻って、「ではフローチャートではなく、どんな方法が良いか?」という話になりました。
夫も「結局、何が一番やりたいかがわからないから……」と悩んでいましたが、私とのやりとりを何度も何度も繰り返して、
「もしかして、『ナレッジベース』を作りたいの?」
と言うではありませんか。
「『ナレッジベース』っていう言葉があるの!?」と驚きました。

そのキーワードで検索をしてみたら、とても良いサイトが出てきました。
そのサイトは、【設問】〈結果〉〈動作〉〈きっかけ〉→→【答え】〈対策〉
という「4つの大分類」の枠があり、その枠の中で「階層」ができていたのです。

夫は大興奮。「最初に出てくるのが〈結果〉。これがポイント! だって普通のサイトだと、『◯◯をするには〜』という〈動機〉から始まっちゃってるでしょ。これが収束しない最大の要因なんだよ。質問者が言葉が足らなくても、〈結果〉から見ることで、質問のルート取りができる。〈結果〉を先に出して、あとは〈動作〉〈きっかけ〉と大分類で制限をかけることで、フローの階層が深くなりすぎないようにしているんだよ」。
Webサイト構築では、サイトとして〈収束する〉ことが大事なんですね。納得。
フローチャートは、設問が明確でないものに関しては、収束より拡散に向かってしまう。
発想法を広げるときに使われる「マインドマップ」と同じ働きになってしまうのですね。

実は私も意識せず、〈結果〉から始まる表を書いたことがあるのです。
ある大手電機メーカーで「機械オンチユーザーが理解できるマニュアル作りとは?」という講演をしたことがあります。その時私が決めた大テーマは、
『ワタシが主人公のマニュアル』でした。ワタシというのはユーザーです。機械のマニュアルって、機械目線から見たものが多いんですね。
注意書きが「注意」「警告」別だったり、「ヒーターでは◯◯しない」「排気口では◯◯しない」と機械の種類別に項目分けをして書いてあったりする。これではお客さんは、自分がどうすれば良いのかわかりにくい。
講演ではパワポで表を作りました。「置かない/金属類、花ビン」「触れない/幼児の手」「使わない/◯◯と一緒に使用しない」というふうに、『ワタシ(ユーザー)がする動作』を基準にした表にしたのです。

その時に話したのは、
「ユーザーは、『自分の身がどうなるか』にしか興味がない。だから『結果』を示すのが先!」。

機械の知識がない自分だからこそ、「〈結果〉を先に!」という持論が展開できたんでしょうね(……今考えると技術者の方に恐縮してしまいますが)。

でも、何かのチャートを書くときには、〈結果〉という枠は、とても大事なのだと改めて思いました。

【その2 に続きます】
posted by 渡辺由美子 at 19:20| Comment(0) | 考察

2013年05月26日

クールジャパンと長期視点

ロボット・産業デザイナーの園山隆輔さんとTwitterでやりとりをして発見がありました。

園山さん:昨夜TVで、多くのスポーツ選手やチームがスポンサーがつかなくて資金面で苦労してるってやってたけど、それでも東京にオリンピック誘致なのね。
「一番の価値を生み出してる本人たちに対価が回ってない」という意味でクールジャパンと似たような歪さを感じずにはおれないね。

そこで私はたずねました。
渡辺:もしかして東京にオリンピックが来たらスポーツ選手のスポンサー増えるかしら?

園山さん:そうだといいんですが、無計画に企業任せにしちゃうと刹那的な効果しかないような気が…文化として長期的にどうしていくのか、っていうビジョンがスポーツにもマンガ・アニメ・ゲームにも欠落してるんじゃないかなあと。

渡辺:そうか…「文化として長期的にどうしていくのか」ここが欠けているから、ソノヤマさんも、他の皆さんも頭を悩ませていらっしゃるのですね……! 私は時間軸の認識が甘くて、すぐに「器を作ってみればいいじゃん」となりがちで。悪い上司タイプですよね。勉強になりました!

園山さん:国が口や金を出す以上は、個人や企業で対応できない時間軸で理念を語ってもらわないと意味がないんじゃないかと思うんですよね。そこまで語ってこその「文化」なんじゃないのかなあと。

=================================
園山さんがおっしゃった「長期的視点」。
そのおかげで、「クールジャパン戦略」の困難さについて、ようやく少しまとまりました。

アニメで聖地巡礼などの町おこしはできるのに、「クールジャパン戦略」に対してはものづくり現場から反対の声が上がっています。
なぜそうなるのか。クールジャパンという戦略の立て方自体がとても難しいものなのだなと思いました。
クールジャパンがやろうとしていることについては、「民間企業」の協力が必須。
民間の利点は、利益を追うために「効果がすぐに出やすい」こと。これは国や公的機関ではできないことです。
ところが、民間は、効果がすぐに出やすい反面、短期的収益を求める特性があります。
そうでないと会社は回っていかないですからね。

逆に、長期視点を導入できるのがクールジャパン戦略、国や公的機関のメリット。
短期収益の視点にとらわれず、長期的視点でのビジョンを提示することができるんです。
長期的な取り組みができない民間に対し、長期視点から民間に影響を与えることが国・公的機関の役割なのだと思います。

……でも、短期収益で動いている組織を、長期的なビジョンだけで「協力してください」と言っても、民間は困りますよね。協力するリスクは自分たちが背負うの?いつ回収できるかわからないもののために自分たちが“持ち出し”で協力するの?って。
(クールジャパン推進会議での秋元さんの発言に対する現場の怒りはそこだと思います)

でも、「現場はこうなんだから役人は出て行け」という言葉も、ちょっと視点が「短期」に寄りすぎているのかなと思います。(私は現場の人間ではないので非常に失礼な言い方で恐縮ですが…)

私も取材をさせていただいたのですが、現場の方々だって、自社にも業界にも長期視点での戦略の必要性、実現の必要性は充分に感じていらっしゃいます。だけど、その長期戦略を取るためのコストは払えない。

だから「足がかり」が必要。
今のクールジャパン戦略には、長期視点と現場とのアクセス――「足がかり」が足りていないのだと思います。
どんな「コト・モノ・イメージ」を足がかりにするのか。
コトだけでも、モノだけでも、イメージだけでもだめで、三位一体になるような足がかりが良いのですが。
それは“お役人”が考えるだけじゃなくて、ものづくりの現場も、ものづくりを愛しているお客さんも、みんなが考えればいいんじゃないかって思うんです。

「長期視点」と「現場を俯瞰から見てみる」というのは似ている気がします。どちらもロングレンジ(長距離)ですよね。
私などはつい視点が対象に寄りすぎて、俯瞰で見ることは後天的に学んだのですが、長期視点という時間軸的なロングレンジも獲得しなければと思いました。

「◯◯戦略」と言った場合、俯瞰から見るトップダウン視点と現場から見るボトムアップ視点の両方が必要で、ひとつの事象について両方にフォーカスを合わせて見ることが大事だなあと思います。
そしてトップとボトム、双方に自在にアクセスできる視点の獲得が一番大事!
あと、ゴールを決めたら、そのためにはどうする?、それを実現するためにはどうする?って見ていくこと。難しいけど。……だんだんロジカルシンキングの受け売りみたいになってきちゃいましたのでここまでで。

だから私は「取材」に行こうと思いました。私自身は、現場の人でも、戦略を作る人でもないから、それぞれの現場を見たり、人に話を聞いたりして取材する。
重要なのは、取材を行う私の脳内にトップダウンとボトムアップ、双方のアクセスの「視点」がそなわっていることなんですね。
取材とかインタビューというのは、誰が聞いても一緒にはならないのだと思います。
私は私なりの「視点」で切り出して多くの読者の方に見ていただくことが、少しでもカルチャーに貢献できる方法なのかなと思いました。

posted by 渡辺由美子 at 13:43| Comment(0) | ビジネス