2013年07月26日

『ガルパン』聖地巡礼の鍵は、大洗の人々と「世界観の共有」ができたこと

「◯◯だけでは人を喜ばすことができても収益にはならないから、
他の△△ともコラボして全体で利益を上げよう」という手法は、今とても熱いです。

サッカー+漫画アニメ
ショッピングモール+趣味コミュニティ
農業+エコツーリズム……

「プラットフォーム」と「バーチャル」なものが結びつく場合が多いですね。
「バーチャル」だけだとお金を払う気にならないし、プラットフォームだけだとお客さんが来ない。
だからこの手法はよくできてると思います。

でも、プラットフォームとバーチャルでお客さんを呼ぶためには、何かもうひとつ、「間」に必要なのかなと思いました。
おそらくは【世界観の共有】です。

アニメ『ガールズ&パンツァー』の聖地巡礼で成功した大洗町の事例を読み解いてみます。
重要なのは2点。
★作品と大洗町との『世界観』のリンク
★地元の商店街・物産店の人々が、『ガルパン』の世界観まで理解して、自分たちで食べ物や土産物を考案していること
(『ガルパン』に協力している軍事研究家・吉川和篤さんによると、地元の人が世界観まで理解した商品を考案するケースは稀だそうです)

『ガルパン』と大洗とのリンクの立役者のひとりは、脚本担当の吉田玲子さんだと思います。
私もインタビューをさせていただいたのですが、(「Febri (フェブリ) Vol.16」ガールズ&パンツァー特集)
吉田さんは、大洗町で戦車の試合をすることが「お神輿をかついだ祭り」のように描写をしたそうです。
お神輿=戦車として、店先に突っ込んで少し壊れても、かえって縁起がいい、となるようにしたんですね。
今、その割烹旅館 肴屋は、大勢のファンが集い宿泊する名所になりました。

そして、戦車試合が行われる大洗町の沿道に、主人公の少女たちを応援する「幅広い世代の女性たち」を描いたこともポイントだったと思います。
これにより「商店街のおかみさん」は、沿道の人々が自分たちとリンクしたのではないかなと私は思います。

町おこしを手がける人は「商店街のおかみさん」の力が重要なことはよくご存じだと思うのですが、そうした方で美少女アニメを見るのはおそらく少数派でしょうし、最初はアニメを見ても、自分たちとは関係ない世界のことだと考えると思うのです。
でも、アニメ作中で「大洗の沿道で手を振る人々」が登場したことで、自身にも参加意識が芽生えたのではないかなと。

私がそう思うのは、女性には特に「作中人物に自分を重ねる」物語の読み方が浸透しているからです。

美少女アニメでは、普通は幅広い世代の女性はあまり登場しないし、ローカルな「沿道で手を振っている人々」をクローズアップしたりしない。戦車と女の子というモチーフを繋げるために考えられたリアリティの積み上げ方、その作劇法が『ガルパン』の土着的な描写になり、古い漁村である大洗町とマッチしたと考えられます。

当時は聖地巡礼効果などは意識せず、物語のリアリティの出し方の一貫だったであろう「沿道の手を振る人々」描写が、大洗町の人々が『ガルパン』世界を理解する契機になった。
『ガルパン』の大洗町は、「地元の大勢の人々が、世界観を理解して商品を考案する」初めての事例になったのだと思います。


※『ガールズ&パンツァー』に協力されている軍事研究家・吉川和篤さんにもお話をうかがいました(感謝)。お話の詳細は夏コミ同人誌『オタク的マーケティング』に掲載です。
【コミックマーケット 8月11日(日) 東ーP03a サークル名『ビバ!メガネくん』】
posted by 渡辺由美子 at 17:22| Comment(0) | ビジネス

2013年07月17日

【記事の紹介】コンテンツ政策記事の自分メモ

記事紹介です。コンテンツと政府の取り組みについてわかりやすく書いてありました。

『コンテンツ政策、国でわざわざやることです
知財ビジョンとクールジャパンの本質』
中村 伊知哉
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130712/251008/


【個人的まとめ】
●「コンテンツを支援するのは、コンテンツ産業の売り上げを伸ばすというより、コンテンツを触媒として家電や食品や観光などを含む産業全体のGDPを拡大できる」

●6月7日、日本政府の知的財産戦略本部(知財本部)で「知的財産政策ビジョン」(知財ビジョン)が策定された。
知財ビジョンは大きく2つの柱から成る。
★「産業競争力」強化策……世界中で適用できる知財システムの構築策や中小・ベンチャー企業の知財マネジメント強化支援策として、職務発明制度や紛争処理機能などの施策が盛り込まれている。
★「コンテンツ」強化策……コンテンツ産業の活性化と対外的な発信の強化策が盛り込まれている。

●知財ビジョンでは、こうした状況の打開に向けて大きく3つの新機軸を打ち出した。
(1)政策の転換(2)優先順位の変更、(3)推進体制の整備
「政策転換」……過去10年間のコンテンツ政策は、エンターテインメント(娯楽)ビジネスが中心だったが、これからの10年は国民全体の問題として捉えていく考えだ。

「具体的に注力していくのは、ユーザーが作成するコンテンツや公共・教育、ビッグデータ。プロが作成するコンテンツだけでなく、国民のすべてが生み出すコンテンツを主役にしていく。」(←「国民が作るものすべてが知財」という考え。「作り手と受け手が近い」は日本の特徴?)

●縦割り行政を廃止。知財ビジョンの策定に関わった省庁は8つ。1つの机で施策を出し合い連携が進むことで生まれた。
●ハードとソフトを一体にして考える(←これは筆者の考え)
posted by 渡辺由美子 at 16:24| Comment(0) | ビジネス

2013年07月14日

「闘A!まんがまつり」川崎フロンターレの地域振興活動

サッカーチーム、川崎フロンターレの「闘A!まんがまつり」に行ってきました。
http://www.frontale.co.jp/info/2013/0607_1.html
公式サイト曰く『鹿島アントラーズとの一大決戦は、川崎ゆかりのマンガをここホーム等々力に集結。川崎のマンガパワーを持って鹿島と闘うべく「闘A!まんがまつり」と題してサポーターの心を奮い立たせます!!』とのこと。(昔あった「東映まんが祭り」とかけてるんですね)
川崎市にゆかりのあるマンガ・アニメのイベントを一緒にやることで、対・鹿島アントラーズ戦を盛り上げようという催しでした。

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すごいのはその本気度!
川崎市の同人誌印刷製本会社「ねこのしっぽ」プロデュースによる「フロンターレ同人まんが」
「フロンターレ同人まんが」付き会場MAP5000枚配布
川崎在住アニソン歌手・きただにひろし&米倉千尋、橋本みゆき「等々力アニソンライブ」
「天体戦士サンレッド」 とどろき豪華絢爛歌謡祭
川崎ゆかりの漫画家「オフサイド」塀内夏子さんらによる描きおろし作品複製原画展示
「宇宙戦艦ヤマト2199」デザインのフォーミュラカーのデモ走行
「天体戦士サンレッド×フロンターレコラボTシャツ」販売
藤子・F・不二雄キャラクタービッグフラッグをスタジアムに提出(掲示)……などなど。

このほかに、「フロンターレ萌え萌えクッキー」販売、「天体戦士サンレッド」ヴァンプ将軍おすすめ!川崎産の野菜販売、“痛車”展示、アニメ制作体験などがあり、オタクである私も、
(よくぞこんなに異業種を集められたなぁ…!)と圧倒されました。
だって「ねこのしっぽ」社とか、同人誌オタには企画力がある印刷会社だと知られているけど、ふつうはわかんないから(笑)。

そう、この催しの一番すごいところは「異業種を『川崎ゆかりの』という軸だけで集めた」点にあると思います!
そして、私のようにアニメライターをやっていると、版権許諾に無駄に詳しくなるんですが(苦笑)、「版権どうやってクリアしたんだ」というところも気になりました。

この川崎フロンターレの試合に連れて行ってくれた女子友ズと旦那さんズによると、すべての企画は川崎フロンターレのプロモーション部部長・天野春果氏によるもので、ほかにも様々なコラボ企画が行われてきたそうです。

天野さんの書籍『スポーツでこの国を変えるために僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ』(天野春果/小学館)を読んだのですが、以下のような様々な働きかけをしたそうです。
●クラブの理念を「ホームタウンの人の生活を豊かに(幸せに)する」と設定
●市役所(行政)に働きかけ、「市民・こども局市民スポーツ室」という川崎市スポーツ振興専用の窓口を作ってもらった
●行政ポスターには選手が無償で協力
●川崎市教育委員会とタイアップして子供たちへの「絵本の読み聞かせ会」に中村憲剛選手が参加
●朝日新聞販売店の集合体である川崎朝日会と協力

天野さんは、アメリカの大学に留学しスポーツマネジメントを学んでいる最中に、地元カレッジスポーツの運営を手伝った経験から、「街の老若男女すべての人がそのスポーツに親しむことができる」良さを自身で体感したそうです。

彼がフロンターレに入ったとき、川崎市はベッドタウンで市民同士の一体感が薄く、過去に他のスポーツチームが入っては去りということが繰り返されたために、市民にはスポーツチームへの不信感があると感じたといいます。
そこで、「フロンターレが川崎市民に郷土愛を育むものなれれば」ということを軸に設定したのだそうです。

今行われている異業種団体とのコラボは、すべてにおいて
「WIN-WINの関係」と
「いかに川崎市を豊かにしていくかという理念を共有する」ことが大事なのだということでした。

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……今、アニメの聖地巡礼が盛り上がっていますが、聖地巡礼が成功するには「地元商店街の協力」が一番の肝になると私は聞いています。
先日書いた事例『コミュニティデザイン』(山崎亮さん)の鹿児島市「マルヤガーデンズ」もそうでしたが、
《お客さん》が『好きなもの』を介して《地域団体》が結びつくことで、【地域振興(=コミュニティ活性化)】が成り立つ。
別の言い方をすれば、地縁血縁が薄くなった現代のコミュニティ作りの手法として、
《地域団体》と《人々》が結びつくには、『好きなもの』が非常に重要な「かすがい」になるということですね。

♯そうそう、フロンターレの試合、すっごく面白かったです!!←これ重要

【追記7月15日】塀内夏子先生のブログにも、天野さんが漫画家さんへの描き下ろしイラストお願いの顛末が載っていました。
http://www.ponytail.co.jp/weekly/2013_06.html

さらにアニメの聖地巡礼の話に続きます。
posted by 渡辺由美子 at 16:30| Comment(0) | ビジネス