2013年06月29日

お客さんは「好きなもの」を通して「参加」したい

前回の続きです

「コミュニティデザイン」の仕事をされている山崎亮さんが書かれた書籍『コミュニティデザイン』には、山崎さんが手がけた商業施設『マルヤガーデンズ』の例が載っていました。
鹿児島市の中心にあるその商業施設には、各階フロアごとに、地域で活動するNPOやサークル団体など様々なコミュニティが活動するオープンスペースを設けたそうです。

地域団体の種類は様々で、エコ活動をしている団体、ミニシアター系映画を紹介している団体、アウトドアスポーツ団体などなど。幾つもの団体が各階のオープンスペースでそれぞれ「プログラム/イベント」を行う。そしてフロアに入ったテナントショップは、そのイベントにちなんだ物を販売するなどしてイベントを盛り上げる。
お客さんは、お店のジャンル(たとえばファッションとか)に興味はなくても、フロアを回遊したり、イベントに関連したものを購入したりするのだそうです。

この、
●フロア全体に「好きなもの」という軸が貫かれている
というところにすごく感動しました。

そもそも山崎さんが依頼を受けて『マルヤガーデンズ』の仕組み作りに取り組んだのは、鹿児島市の天文館地区を活性化するためでした。近年、郊外に大型ショッピングセンターができて客足が減り、そのために地区自体を活性化させる必要があったとのことです。

「コミュニティデザイン」という言葉も、山崎亮さんによる造語で、コミュニティの仕組みづくりを表わしています。

この『マルヤガーデンズ』で私が興味深いと思った着目ポイントは、
デパート全体に「好きなもの」という軸が貫かれていることによって、
●「好きなものの世界に浸る」
●「好きなものを媒介にして知らない人同士がリアルにコミュケーションを取る」

ということが実現できることでした。

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これからの販売では、お客さんに「体験」「参加」してもらうことが大事になってくるんだろうなと思います。

今のお客さんは「モノ」だけでは惹かれにくい、そんな話はよく聞きます。
どこにでも似たようなモノがあふれていて、しかも安いからいつでも手に入る。さらに、若い人ならネットや映像娯楽などの「バーチャルな情報」を大量に浴びている。
そうなると、若い人も含めて欲しくなるのは「自分の身体を使った自分ならではの実体験」なのかなと思います。

「モノからコトへ」というフレーズがありますが、お客さんはモノだけではなく、コト(=体験)を欲している。
エンターテイメント分野で言えば、音楽シーンでも、お客さんはCDを買う以上にライブに行く行為を楽しんでいます。娯楽自体が「何かを買って眺める」から、「体験型」にスライドしているんでしょうね。

そうしたことをつらつら考えていて思い出したのが、
オタクフィールドで流行している『聖地巡礼』でした。
アニメやマンガなど作品の舞台になった土地を訪れる『聖地巡礼』、最近はファンが写真を撮りに行くだけでなく、作品を作っている会社が地元商店街などにも協力してもらう形で、「巡礼」に来たお客さんに作品に登場する料理を提供したり、作品と土地の名産品をコラボした商品を作ったりと地域を巻き込んだ大きな盛り上がりになってきています。

●フロア全体に「好きなもの」という軸が貫かれている
●「好きなものの世界に浸る」
●「好きなものを媒介にしてコミュケーションを取っている」

『聖地巡礼』と『マルヤガーデンズ』は、偶然にも同じ構造になっていたのです。

次回『聖地巡礼』話に続きます

posted by 渡辺由美子 at 18:09| Comment(0) | ビジネス

お客さんの「好み」を軸に、異業種が連携できる仕組みづくり

本の売り方で、残念な話を聞きました。
好きな人にはすごく求められていたあるカルチャー系書籍があったのですが、ファンが殺到して即品切れになり、購入できないファンが続出。それなのに、しばらくしたら全国の本屋さんから「返本」がたくさん戻ってきてしまったそうなのです。
要は、専門店やカルチャーに特化した書店では速攻で完売してしまい、全国の「ふつうの」本屋さんでは売れ残ってしまったということなのでした。

これは専門書籍が全国各書店に「まんべんなく」配本されているから起こってしまった悲劇だったそうです。

今の時代、お客さんの「好みの細分化」は進んでいます。たとえば、同じオタクと言っても、マンガとアニメとゲームのファンでは追っている作品、語れる作品が違っています。もちろんオタク以外のフィールドでもその傾向は顕著。女性誌が、少しづつ違うテイストで多種多様に発行されてるのを見ると、好みにこだわる人たちが増えてきていると感じます。
観るTVも、読む本も、観戦するスポーツも、今を生きる人は、ちょっとずつバラバラな好みを持っていたりします。

お客さんの「好みの細分化」が進んだ今、書籍の配本を、都市の人口比や書店の規模に応じて「均等に」配本することが、返って売り逃しに繋がってしまう。……とても残念なことだなと思います。

「好きな人に確実に届く」流通販売システムがあればいいなぁと思うのですが、
「好み」に特化した、というより「好きな人以外手に取らない」(笑)オタク分野では、「好きな人に確実に届く仕組み作り」が他分野よりもちょっとだけ早くから行われている気がします。

オタク向け書籍であれば、最近多くなったケースが「重点配本」。マンガやアニメを多く扱う書店に重点的に配本します。先日聞いた「悲劇」も、こうした仕組みづくりによって、少なくなったのではないでしょうか。

もうひとつ、オタクショップで興味深いのが、書籍、アニメDVD、ゲームソフト、ポスターなどのアニメグッズをひとつのビルで一括横断的に扱っている店舗があること。
秋葉原のアニメイト、とらのあななどが該当しますが、ひとつのビルがまるごとオタク関連商品店舗になっていて、各フロアごとに、書籍、ソフト、グッズという風に分かれています。お客さんは各フロアごとにお会計を済ませては違うフロアに移動しています。

今現在、世の中の店舗のほとんどは、本なら本屋、家具なら家具屋というふうに分かれています。それは「生産」が業種別に行われているから。流通も、販売もそれに従わざるを得ないということです。
でも、自分たちが「お客さん」であるときには、買いたい物は「業種別」ではないんですよね。

最近も、調理器具の問屋街である「合羽橋」に行ったのですが、本屋さんが見あたらないのです。
キッチンの道具を見たら、料理の本を読みたくなる。蕎麦の道具を見つけたら、「蕎麦入門」の本のひとつでも買って帰りたくなるではありませんか。

お客さんの行動基準はやっぱり「自分のしたいこと」。生産側の都合である「業種・品別・企業別」基準では動いてない。きっと誰もが思っていることですが、生産都合で販売形態が決まってしまう現状では、お客さんを呼び込むことが難しい。

そうそう、「合羽橋でキッチン書籍が欲しい!」という話をTwitterでしたら、フォロワーさんが教えてくれました。
『ハンズの革製品売場には「はじめてのレザークラフト」的な本が並んでましたよ。(他の売り場もそうなってるかも)それ見ながら道具揃えて道具と本買ってくおじ様見ました。店員さんへの質問時間の省略にもなるし頭いいなぁ、と』

そうか! お客さんの「◯◯したい」を商品購入に結びつけている例としては、オタクショップより超先達の『東急ハンズ』がありました!

『ハンズ』はクラフトマンが集う場所ですが、そこから扱う商品を増やしていった感じですよね。

お客さんの「好き」「◯◯したい」を串刺しして、異業種店舗が連携できる仕組みづくりがあれば良いのでしょうね。

次へ続きます
posted by 渡辺由美子 at 17:56| Comment(0) | ビジネス

2013年06月28日

ショッピングモールに「つき合わされる」男性のニーズ

 実は最近、我が家では大きな“革命”が起きました。夫がショッピングモールの買い物によくつきあってくれるようになったんです。それによって、収納家具や夫の服のような「私だけでは判断できない」アイテムがようやく購入できるようになりました。

まあ、二人一緒に買いに行けば良いのですが、忙しい夫をショッピングモールにつき合わせるのが申し訳なくて、いつも延び延びになっていたのでした。

……申し訳なく思うのは、そうしたショッピングモールには、夫が好きなモノがほとんど置いていないからです。
夫が行きたい場所はいつだって秋葉原みたいなところ。パソコンのパーツショップやアニメ関連商品がある場所です。うちの夫はやや極端かもしれませんが、世の多くの男性はショッピングモールが好きかというと疑問です。たとえばデパート。よく、各階の階段にある休憩ベンチには「彼女または妻の買い物につき合わされて待たされてもう死にそう!」と、死んだ魚の目をした男性たちがマグロのように並んでいますよね……。

私も昔は、夫のパソコンパーツショップめぐりにつき合わされて「もう死にそう!」になっていました。
自分が興味ないものを見て回るのがこんなに苦痛なんて……男性の皆さん、お察し申し上げます。

思うに、デパートもショッピングモールも、(うちの夫のような)“おしゃれに興味ない男性”をあまり相手にしてくれていませんよね?
ショッピングモールには必ずユニクロ、ヨドバシと、男性にとって「無難・定番」なお店は入っていますが、それならどこにでもあるから、わざわざ大規模なショッピングモールに行こうとは思わない。あれは女性の買い物につき合わされる男性の苦労とイライラを軽減してくれる“緩衝材”くらいの役割なんじゃないかと思います……。

閑話休題、夫がショッピングモールによくつき合ってくれるようになった理由は、
TVで放映していたアニメ作品が「劇場版アニメ」になるケースが増えて、ショッピングモールに入っている「シネコン」に出かける回数が増えたからなのでした。
休日は、アニメ映画の前か後にインテリアショップに行って、収納家具を決めるというのがひとつの定番の過ごし方になりました。

アニメ映画のおかげで我が家の居住環境が良くなるなんて、思いもしませんでした。

ショッピングモールという大規模商業施設については、頭打ちという声も出ます。
でも、まだまだ「付き合いで来ている」男性客のニーズの部分はぽっかり空いているんじゃないかと思っています。

そういうことを言うと、必ず「男性は、ショッピング自体が好きじゃない」というふうに返ってくるのですが、ショッピングというのが「=ファッション」に偏重していることが問題なのであって、たとえば「映画」のような「別の消費行動」と結びつけばいいんじゃないかなと思います。

隠れたニーズの顕在化ということでは、
「ザクとうふ」が面白かったです!
お豆腐を作っている相模屋食料さんが『機動戦士ガンダム』に登場するザクをモチーフにしたお豆腐を作って売ったら、男性に大人気になったとのこと。
日経ビジネスオンラインの記事「量産型の逆襲」に詳しいですが、

鳥越社長が「ザクとうふ」を作った理由のひとつは
「スーパーで妻の買い物につき合わされて退屈している男性が、
スーパーの中で少しでも楽しくなれる商品を作りたかった」というものだったそうです。
確かに料理をする人以外、スーパーマーケットには男性が心惹かれる商品は少ないですものね。

●相模屋食料
http://sagamiya-kk.co.jp/index.html
●特設サイト
http://sagamiya-kk.co.jp/big-zam/nz_top.html

「買い物につき合わされる男性」が楽しくなると、お店も、ショッピングを楽しみたい女性も、みんな楽しくなるんじゃないかなと思いました!


posted by 渡辺由美子 at 15:03| Comment(0) | ビジネス